鍼道秘訣集
- yokando2
- 2023年7月29日
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『鍼道秘訣集』は夢分流の撃鍼(うちばり)の秘伝書で全40章からなる。半日ほどで読める分量だが、なんといっても16世紀の日本で独自に開発された鍼の本であり、貴重だ。経絡を無視し、問診を行わず、腹だけを観て診断し、腹のみに鍼を立てて病を治すというユニークな技法なのである。この撃鍼は、禅僧だった夢分翁が、母の病を治したい一心で工夫をこらして生み出した鍼術である。夢分流で一番大事にしているのが、鍼を立てるときの心持ちだという。
・ 事(わざ)に無心にして心に無事なれば自然に虚にして霊空にして妙。挽かぬ弓、放さぬ矢にて射るときは中らずしかも外さざりけり。
・ 貪欲、瞋恚、愚痴の三つの念あらざるときは心清浄(すみ)て、病を癒さんことは疑いなし。
夢分流では、臍を三焦の腑と考え、脈はこの臍に指の腹をあてて観る。しかも、動気(平脈)、動気の乱れ、相火(早い脈)、相火の乱れの4つの脈のみで判断する。さらに、この書の中には、懐妊と瘀血、気違いと狐付きの見分け方など、知りがたい貴重な秘法が簡潔に述べられている。
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