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名家灸選


名家灸選

朝議即通事舎人越後守和気惟亨著


――上部病――


眼目

〇気逆により赤眼あるいは昏暗して明らかならざる者を治する法(試効)

  【風門】百壮、【三里】十壮

  毎日これに報いる。素より頭上に瘡気あり気逆する者はこの法至って妙なり。

〇虚(うつろ)な眼にして光なき者を治する法(俗伝)

  【肝兪】五十壮、【腎兪】三十壮

  右に灸しおわりて後三里に灸すること十壮、よく気逆を降ろす。日をおってこれに報いる。

〇小児の雀目(とりめ)を治する灸法(試効)

  【合谷】一穴これに灸すること十壮


〇鼻中時々臭い黄水流れ、はなはだしきは脳もまた痛み、あるいは鼻より臭気出ずる者(=蓄膿症)を治する法(準縄)

  【顖会】一穴、【通天】二穴

  灸すること七壮、みな鼻中に鼻積一塊を去り、朽骨のごとき臭言うべからず、全く癒ゆ。


牙歯

〇牙歯の疼痛甚だしき者を治する法(蘓沈良方)

  【顴髎?】左右の患處に随い肩尖の後骨に近い縫中、少しく臂を挙げて之を取る。骨解陥中に当たり、五壮灸す。予親しく数人に灸するを見、みな癒ゆ。灸しおわりて、項(うなじ)大いに痛むも良(やや)久しくして定まり、永く発せず。

〇牙歯に血出でて止まず、あるいは咽喉腫れ痛み、あるいは齦(はぐき)腫れて痛むを治する法(五蘊抄)

  【天?】稗(ひえ)を以て大椎より肩髃後骨に至りて之を断じ、また分析して大椎を中分し尽くる處を以て点す。これに灸すること各一七壮。

〇歯痛を治する名灸(得効方)

  【外関?】縄を以て手の中指から量り掌後横紋に至りて折り、四分となし三分去り、将に一分ならんとする横紋後臂中に於いて三壮灸す。左右に随ってこれに灸す。△横紋後臂は手背横紋の臂に至るの地を言うなり。

〇齲歯(むしば)を治する法(見宜堂試効)

  【少商?】手の大指爪甲の際、これに灸すること一壮。痛み左右に随いてこれに灸す。

〇一切の歯痛を治する妙灸(試効)

  【大椎?】大椎上の横紋正中の一穴、これに灸すること妙。△頭を仰げば則ち当に横紋見ゆるなり。

〇牙歯の疼痛を治する奇兪(俗人伝)

  【両手中指背第一節前の陥中】に灸すること七壮にして即ち癒ゆ。


咽喉

〇痰火、喉風、咽腫および頜(おとがい)熱して痛む者を治する法(五蘊抄)

  【膏肓?】先ず五指の寸を取り、合わせて一縄となし畢て、大椎に直(あ)て下して尽きる處に仮点す。また合口(口をつぶる)の寸を取り、仮点に直て、腫れ左にあれば左に点し、右にあれば右に点す。これに灸すること十一壮。三日これに灸して癒ゆ。


噦逆(しゃっくり)

〇噦逆を治する法(蘓沈良方)

  【乳根】凡そ傷寒および久痔は噦逆を得ればみな悪喉となす。薬を投じるもみな効かざる者はこれに灸して必ず癒ゆ。予逐にこれに灸し肌に至らしめて噦逆已む。その法は乳下一指ばかり正しく乳と相直たる骨間の中、婦人即ち乳頭屈してこれをはかり乳頭と斉しき處これ穴なり。艾柱は小豆ばかりのごとくし、これに灸すること三壮。男は左に灸し、女は右に灸すことただ一處。肌に至りて即ち差(い)ゆ。もし差やざれば則ち多くは救えず。△これ即ち乳根穴なり。嘗て噦癖ある者を治すること一施して、久しく癒ゆ。

〇噦逆を治する法(回春)

  【気海】に灸すること三五壮、即ち験あり。

〇大病中に吃を発して止まざる者を治する法

  【中脘】【膻中】【期門】の三處に灸して即ち効あり。


喘急咳嗽

〇痰喘甚だしき者を治する法(試効)

【淵液?】先ず縄子を以て腋下前紋より乳中に至りてこれを断じ、還(かえ)して中断す。また前紋直裏下に直て尽きる處を以てこれに点ず。各二穴。

〇痰喘気急時に発する者を治する法(五蘊抄)

  【心兪?】【右膈兪?】先ず患人をして両足を均しく并(なら)べしめ、蝋縄を以て四辺を周遶し、還(かえ)して中折り、結喉に直て両背に垂下して両頭を合わせて尽きる處に仮点す。その点より各々開くこと一寸半。また右辺の点より三寸を下る一点。凡そ三穴。

〇痰飲喘急発し則ち臥すことを得ざる者を治する法(一老医伝)

  【膈兪】【肝兪】【筋縮】【脊中】七兪(左右二穴各々開くこと寸半)、九兪(左右開くこと寸半二穴、骨上一穴合わせて三穴)、十一椎下間一穴。

  右六穴逐月にこれに灸す。壮数尤も多くを佳しとなし、病根を抜く。

〇肺脹れ喘して横臥することを得ざる者を治する法(赤水)

  【三陰交】左に臥することを得ざる者は右足三陰交に灸し、右に臥することを得ざる者は左足三陰交に灸すれば則ち立ちどころに癒ゆ。

〇平素に喘癖ある者を治する法(紀州児玉氏伝)

  【右膈兪?】縄子を以て膕(ひががみ、膝窩)中横紋より足大指端に至るの寸法を取り、その寸を以て結喉に直て背骨に垂下して尽きる處に仮点し、同身寸を以て右に開くこと一寸一穴なり。△按喘いまだ発せざる時、また喘まさに発せんとする時にこれに灸すること三十壮にして極めて験あり。

〇気喘上逆して死せんと欲する者を治する法(救急易方)

  【膻中】五壮、【天突】三壮

  △凡そこの二穴は急喘を救い、効あらざる者なし。予経験すること已(すで)に六七に及ぶ。また資生に云う、傷寒咳甚だしきに天突に灸すれば即ち差ゆと。

〇喘急妙灸(古伝)

  【闕陰兪骨際?】先ず縄子を以て大椎に直てその両端を以て両乳上に至りてこれを断じ、その縄子の端を以て患人の口横寸を取り、これを断去してその余寸において結喉に直て背骨に垂下し、その尽きる處の骨際に点す。一穴。男は左、女は右。

〇咳嗽上気して冷痰多き者を治する法(試効)

  【肺兪】に灸すること五十壮、また【乳根?】両乳下黒白肉際に灸すること各々百壮。


膈噎(かくいつ)・翻胃(=嚥下障害・胃もたれ)

〇膈噎を治する神法(江州太医伝)

  【大椎から命門まで一節ずつ】大椎の節下間より七椎の節下間に至るまで、毎節に七八壮。吸気に臍下において帰するを効となし、これに灸すること七日。而してまた、七椎より十四椎まで節下間に各々灸すること七日。

〇痰膈を治する名灸(五蘊抄)

  【神道?】患人をして両足を合わしめ縄を以て四辺を遶(めぐ)らしその縄を取りて結喉に直て背に垂下し縄頭を合わせ尽きる處の背骨の一点、これに灸すること十五壮して効あり。

〇噎して穀食を納めざるを治する法(試効)

  【至陽・中枢の骨際】【三里】七椎と十椎との骨際、まさに食する時にあたりこれに灸すれば即ち納まる。また三里穴、これに灸して妙なり。

〇翻胃に灸する法(回春)

  【肩井】に灸すること三柱、立ちどころに験あり。

〇八曜灸法(試効)五膈反胃を治するに甚だ妙

  【大椎の周囲八点】大椎の節下に仮点し、同身寸一寸を以て四辺八穴に図の如くこれに灸する。





――中部病――

腹痛

〇久しい腹痛および喘急を治する法(古伝)

  【?★】患人をして両足を踏斉し縄子を以て両足の赤白肉際を遶らすこと一回半にして中折し、縄子を結喉に当て背骨に垂下し両頭を合わせ尽きる處に点記す。中指同身寸一寸を以て本点左右より各々開くこと一寸に仮点し、仮点より一寸上り、これに点じ、また仮点より一寸下り、これに点ず。すべてで五穴。灸すること三十壮ばかりにして、あるいは痛み甚だしく下痢する者あり、怪しむことなかれ。腹中の腐壊去るなり。

〇陰寒にして腹痛むを治する法(古伝)

  【小沢】穴に灸すること三壮、男は左、女は右。

〇陰寒にして極めて冷え手足氷冷し、腎嚢(=睾丸)縮入し、牙関(=顎関節)緊急して死せんと欲するを治する法(回春)

  【神闕】【水分?】【陰交?】【肓兪?】大艾柱を用い、臍中に灸す。その臍上下左右各々開くこと八分、四方に小艾柱を用いて灸すること五壮。


積聚(しゃくじゅ)・癥瘕(ちょうか)(腫瘍・血塊)

〇瘕聚七穴(家伝)

【腰陽関の周囲七穴?】凡そ積聚、癥疝、婦人の経閉、帯下、久しく受胎せざるの類、皆これを主どる。先ず患人をして正立せしめ竹杖を以て臍中に直て、縄子を以てこれを紐び、これを背骨に直てこれに点ず。また同身寸一寸を以て上下左右に点ず。また左右の点より各々開くこと一寸の二点、凡て七穴。△おおよそ癥疝、痃瘕、その因一ならず。宜しくその所着の處より各々その治法を定め、素より一定の法なし。この法のごとく小腹、臍傍、腰部にある者は宜しくこれを主どる。

〇梅花五灸法(家伝)

【中枢の周囲五穴?】凡そ積聚、気滞、腹内攣急、あるいは陰に発する癇症、殆ど労瘵に類するの症、頻りにこれに灸して効あらざるなし。大椎より尾骶骨に至るの寸を取りてこれを中断し、再び大椎に直て垂下し尽きる處の背骨上にこれを点ず。またその寸を取りこれを中断し、およびその一つ分を取りてこれを三折りしその二つを去りその一つを用ゆ。背骨の一点より各々上下左右、これに点ず。頻りに灸して頻験あり。

〇痞塊を治する灸法(医学綱目)

  【腰陽関の骨際?】稗を以て患人の足の大指を量り斉し、足の後跟中に至りて住しめその稗を将(ひき)い、尾骶骨尖より量りて尽きる處の背際に至り、各々開くこと一韮葉ばかり。左にあれば右に灸し、右にあれば左に灸すること七壮にして神験あり。△かつて痃瘕少腹にある者を治するにこの法を用いて数百壮にして逐に癒ゆ。今案ずるに壮数多々にして益々佳し。

〇また法(入門)

  【内庭?】足第二指の岐叉する處において灸すること五七壮。左を患うには右に灸し、右を患うには左に灸す。のち一晩夕にして腹中響動を覚えれば、これ験なり。


疝気(下腹部の痛み)

〇小腸の疝気痛を治する法(救急易方)

  【大巨?】縄子一条を用い患人の口両角を度量して一則となし、摺断す。かくのごとく三則で三角△字様に摺断す。一角を臍の中心に安んじ、両角は臍の下にありて両角尖の尽きる處、この穴なり。左患えば右に灸し、右患えば左に灸す。両辺ともに患えば両穴みな灸す。各々三七壮、極めて験あり。

〇小腹急痛し忍ぶべからざる、および小腸気外腎偏墜して諸気痛むを治する法(医綱本紀)

  【内庭?】足の大指の次の指の下中節横紋の当中に灸すること五壮、男は左、女は右、極めて妙。両足に灸して愈々妙なり。

〇疝気を治する名灸(俗伝)

  【陰交の両傍1寸】臍下一寸に仮点し、その両傍各々開くこと一寸の二穴、頻りに灸す。





――下部病――

淋疾

〇五淋を治する灸法(古伝)

  【鳩杞、上髎?】琳痛甚だしき者を治するに立ちどころに験あり、緩症には日を経て徐(おもむ)ろに効あり。口の両吻より鼻下に至り人字様の寸を取る。また合口の寸を取り、尾骶より背骨に上らせ点ず。また人字様の寸を取り、中折し前点に当て、両傍尽きる處にこれを点ず。合わせて三穴、各々一七壮灸すれば極めて験あり。

〇淋疾疼痛甚だしき者を治する法(試効)

  【下巨虚?】先ず縄子を以て三里より解谿に至る寸を取り、これを中折し、尽きる處にこれを点ず。左右合わせて二穴。△婦人の琳瀝疼痛甚だしき者を治するにまた妙なり。病甚だしき者はこれに灸して熱を覚えざる者あり。壮数多々にして益々佳なり。

〇又の法(備中太医伝)

  【行間?】大敦穴より大指本節に至る寸を取り、これを中折して正中一点に七壮灸すれば極めて験あり。

〇諸淋を治する灸法(俗伝)

  【豊隆?】凡そ淋疾、虚実を問わず皆これに灸して即ち効あり。承山穴より縄子を以てこれを遶らせ、その外側陽明経に直て、脛骨の傍ら指を容(い)るる處にこれを点ず。灸数百壮にして益々妙なり。凡そ琳家はこれに灸して甚だしき熱さを覚えざるなり。


陰病

〇陰痒く水出でて差(い)ゆ能わざる者を治する灸法(医心方)

  【亀尾】背の窮まる骨に灸すること、年壮に随う、或いは七壮。

〇卒(にわ)かに陰卵腫れ疼痛忍ぶべからざる者を療する法(同上)

  【大敦】足大拇指頭の爪甲を去ること韮葉のごときに灸す。年壮に随ってこれに灸す。右に核腫あれば右に灸し、左に核腫あれば左に灸す。両核ともに腫るるはともにこれに灸す。一宿にして癒ゆ。

〇陰卵偏墜し、腫大なるを治する方(小品方)

  【中極、肩井、関元】玉泉(=中極)に灸すること百壮。また云う、肩井ならびに関元に灸すること百壮。


遺精

〇夢遺、泄精を治する法(試効)

  【志室?、瘕聚七穴、腰眼】十四椎の背骨を去ること二寸半(第三行)、これに灸すること二十一壮。△遺精の症、寒疝による者頗る多し。近くは瘕聚七穴および腰眼に灸す。合わせて九穴、数百壮にして瘥(い)ゆ。


遺尿

〇遺尿を治する法(試効)

  【脊中・命門・腰眼】十一椎、十四椎、腰眼穴に灸すること逐日に五十壮、一七日にして瘥ゆ。

〇睡中に遺尿するを治する法(救急易方)

  【大敦】足の大敦に灸すること毎日三壮。

〇遺尿秘灸(江州民家伝)

  【左次髎の骨際】十九椎の左の骨際一穴、大柱艾四五十壮にして験あり。△この法甚だ妙。しかし熱耐えざる者は逐日に六七壮ばかりこれに灸してまた佳なり。

〇小児遺尿を治する法(試効)

  【腰陽関?・腎兪】臍に直(あ)たる椎骨一穴、腎兪二穴、毎夜臨臥してこれに灸すること十五壮ばかり、凡そ三十日にして験あり。


下痢

〇久しき下痢を治する法(救急良方)

  【神闕・陰交】臍中に灸すること七壮、また臍下一寸に灸すること三七壮。

〇老人小児滑泄して久しく止まざる者を治する法(試効)

  【百会】に灸すること日に七壮。

〇滑泄し大いに渇き、飲を引き、水入れば則ち泄するを治する法(易老方)

  【大椎】に灸すること三五壮にして則ち癒ゆ。

〇赤白痢久しく禁ぜざる者を治する法(俗伝)

  【神闕】焼塩を以て臍中に填(は)め、灸二百壮に至る。多々にして益々佳なり。


痔漏脱肛

〇五痔を治する奇兪(古伝)

  【鳩杞・上髎?】稗(ひえ)を以て掌中四指一扶横寸を取りこれを亀尾に直て背骨に上らせ尽きる處、これに点ず。また合口横寸を取りこれを中折し、この背骨の前点に直て両傍開きこれに点ず。凡そ三穴、背中に十五壮、左右に各々十七壮。

〇痔を治する妙法(得効方)

  【腰陽関?・大腸愈?】患人をして正立せしめ、背と臍と平たき處を量り、椎上に灸すること七壮。或いは年深き者は更に椎骨両傍の各々一寸に七壮灸し根を除く。

〇痔痛を治する法(回春)

  【百会】に灸すること三五壮にして忽ち験あり。

〇痔漏を成すを治する法(渓心法)

  【患部】附子末を以て津唾(つばき)に和して餅子を作り、銭大のごとくして漏上に安じ、艾を以て灸して微(かす)かに熱し、乾けば則ち新しき餅に易(か)えて再び灸す。明日または灸し、直ちに肉平らかに至りて効となす。

〇肛門の湿痒および沈痔を治する妙法(古伝)

  【上髎?】十八兪の左右各々開くこと二寸、これに灸すること三十壮にして験あり。

〇五痔脱肛を治する名灸(古伝)

  【気海兪?】患人の臂尖より掌後腕骨(陽池穴)に至る寸を取り、尾骶骨に直てて上る處、これに仮点す。また同身寸一寸を以て仮点の左右各々開くこと一寸、これに点ず。

〇脱肛し肛門翻出する者を治する法(五蘊抄)

  【鳩杞?】両乳間の寸法を取り、四折して三を捨て一を取り、亀尾に直て上り、これに点ず。一穴に灸すること十五壮。

〇疣痔突出する者を治する法(試効)

  【気海愈?・命門の骨際?】掌後横紋より中指頭に至る寸を取り、これを尾骶骨上に上らせ仮点す。左右各々一寸、また仮点上より一寸の男左、女右骨際に点ず。合わせて三穴。





――緩治病――

中風

〇中風口眼喎斜を治する法(医学綱目)

  【喎陥中】喎右に向く者は左の喎陥中に灸し、喎左に向く者は右の喎陥中に灸す。各々二七壮して立ちどころに癒ゆ。

〇中風七穴(資生)

  【百会、曲鬢、肩髃、曲池、風市、三里、絶骨】凡そ手足或いは麻し或いは痛みを覚えれば皆当にこれに灸すべし。右逐月にこれに灸すれば則ち予め中風を防ぐなり。

〇中風初めて起こり、口眼喎斜し、左癱(しび)れ右瘓(や)む者を治する法(入門)

  【耳垂珠】急ぎ人中を搯(つま)み、頂髪を抜き、耳の垂珠に灸すること粟米大三五壮。


労瘵(=肺結核)

〇労瘵を治する灸法(江州一医累代の伝)

  【巨闕兪の両傍?】臓腑虚損し身体羸痩し骨蒸し労瘵し虚咳し盗汗する者これを主る。先ず稗を以て男は左、女は右の手五指の長さを量る。またこれに加うるに、無名指、中指の横紋を量り、両寸法を合わせ、結喉に直て、肩両傍を垂下し、合わせて椎骨に直て、男は左の背際、女は右の背際一穴、これに灸すること日に三十壮。凡そ灸すること月朔三日に至り、これより始め、灸すること七日、逐月かくのごとくし、宜しく局方楽令の建中湯を兼用すべし。△この法、嘗て初症を救い効を得ること最も多し。已成に至れば能く及ぶことなきなり。

〇虚労の咳嗽および陰発の癇症を治する法(俗伝)

  【志室、懸枢、胃倉?】先ず患人をして正立せしめ、竹杖を以て臍中を平らかにし、縄を以て却ってこれを背椎に直て仮点す。同身一寸を以て仮点の両傍各々三寸に点ず。また仮点上一寸の脊椎に直て一穴とす。またその点より一寸上に仮点し両傍各々三寸に点ず。都て五穴、穴ごとに二十壮、合わせて百壮、逐日これに灸し、癒ゆるを以て度となす。

〇労瘵を治する秘灸(試効)

  【膀胱経第二行】大椎より二十一節に至る第二行、患人の勢力に随い上よりこれに灸し、十一より十五六に至るの頃、必ず糞中当に虫を下さんとし、則ち癒ゆる。若し虫下さざればその病癒えず。この法、逐日漸次当にこれに灸せんとして至妙なり。


癲狂

〇癲狂し、言語を択ばず尊卑を論ぜざるを治する法(医綱本紀)

  【唇裏】唇の裏中の尖肉弦上に灸すること一柱、小麦大のごとし。また銅刀を用いて割断すれば更に佳なり。

〇癲癇を治する灸法(俗伝)

  【命門、中枢、胃倉?】大椎より長強に至る寸を取り、中断し、却って大椎に直て下し尽きる處に仮点す。また中断の縄を将に三折して一分を去り二分を取り、中折し仮点に直て上下左右にこれを点ず。四花に点ずる法のごとし。各々五十壮。

〇狂乱を治する灸法(試効)

  【身柱、長強、懸枢、脾兪?】先ず患人を正座せしめ、身柱、長強二穴、これに点ず。また稗を以て二穴の際を取り、これを中断し、その尽きる處、これに点ず。また中断の寸を以てこれを三隅とす。その一隅を以てその正中の点に直て、しかしてまた上の二隅に点ず。合わせて五穴。初点の月一穴各々百壮、これに灸し、次月に当たりて発狂癒ゆること甚だしき者は佳兆となす。逐月これに灸して百発百中至妙なり。△この法、先君の試効已に六七人に及ぶ。故に帳中に秘め、年ありて予頃(このご)ろこれを拡げ、陰陽両癇を救うこと甚だ多く、故に今、同志のためにこれを公にす。

〇失心風、驚悸、癲狂、気逆を治する秘灸(古伝)

  【女膝】足の後踝赤白肉際に灸す。左右各々五十壮して即ち験あり。


瘰癧(=リンパ節の腫脹)・気腫

〇瘰癧を治する妙灸(古伝)

  【合谷、肩髃、曲池、手三里】の四處左右の八穴、各々灸すること十五壮、日に二たび報ず。△この法、気道を行(めぐ)らす良法故に瘰癧・気腫の軽き者、これに灸して効あり。その他、肩背、手臂の便ならざる者もまた佳なり。

〇瘰癧を治する妙灸(救急易方)

【天井?】手を以て仰ぎて肩上に置き、微かに肘を挙げてこれを取る。肘骨尖上これ穴なり。患う處に随い、左なれば即ち左に灸し、右なれば即ち右に灸す。艾柱は小様筋頭大のごとし。再び灸するに前の如くす。三次に過ぎざれども永く恙なし。

〇またの法(同上)

  【瘰癧上】蒜(ニンニク)片を以て瘰癧上に貼り着け、灸すること七壮。一たび蒜を易(か)え、多灸して効を得る。

〇瘰癧、気腫および梅核気を散ずる灸法(試効)

  【至陽、中枢の際】脊椎第七、第十椎下骨際頻に灸す。男は左に灸し、女は右に灸す。


水腫・鼓脹

水腫病に灸する法(医心方)

  【膈兪、脾兪、意舎】膈兪に灸すること百壮三たび報ず、脾兪に灸すること百壮、意舎に灸すること百壮。右五穴、逐日これに灸す。

〇鼓脹に灸する法(古伝)

  【肝兪、脾兪、水分、三焦兪、天枢】右九穴、日に灸すること百壮。





――急需病――

傷寒(感染症)

〇傷寒の陰毒より危極となり薬餌の効無きを救う法(本事方)

  【神闕、気海、関元】速やかに臍中に灸すること三百壮、また気海・関元に灸すること二三百壮、手足の温暖をもって効となす。

〇傷寒の結胸を救う灸法(綱目)

  【神闕】巴豆(はず)十枚の皮を去り細く研り、黄連末一銭、右、津唾を以て和して餅と成し、臍中に填(は)め、艾を以てその上に灸し、腹中に声あればその病去る。壮数にかまわず病去りて度となす。灸しおわりて温湯を手に浸し、怕(しず)かにこれを拭く。瘡を生ずるを恐るるなり。


瘧(おこり、マラリアの一種)

〇瘧を截(た)つ灸法(蘓沈良方)

  【気海、中脘】凡そ久瘧に服薬訖(お)えて乃ち気海に灸すること百壮、また中脘に灸すること三十壮にして即ち瘥ゆ。

〇瘧を截つ法(試効)

  【亜門?】督脈の後髪際に入りて二分、これに灸すること三壮して乃ち截つ。

〇截つ法(試効)

  【章門、大敦】発する時に当たり章門に灸すること三五壮にして後ち截薬を与う。あるいは肝積ある者は大敦に灸して妙。

〇また法(救急良方)

  【大椎・合谷】大椎上一穴に灸すること七壮、また合谷に灸すること七壮にして即ち截つ。

〇秘伝截瘧の妙灸(試効)

  【脊椎の阿是穴】瘧将に発せんとする以前に臨み、意を静め精(くわ)しく脊椎を察(み)る。則ち瘧気下より上がる者あれば手を以て椎骨を按ずる。則ち忽ち凜然として寒するを覚ふ處あれば、その椎骨に点して頻りにこれに灸する。則ち即ち截つ。この法妙なり。


血症

〇下血して度なきを治する法(回春)

  【命門?】臍に直たる背骨に灸すること一穴五七壮、再び発せず。

〇衂血(はなじ)止まらず脳衂と名づくる者を治する法(試効)

  【上星】に灸すること五十壮。

〇虚労の吐血、唾血を灸する法(得効方)

  【中脘、肺兪】中脘に灸すること三百壮、肺兪に灸すること年壮に随う。


霍乱(日射病)

〇霍乱して小便通ぜざるを治する法(五蘊抄)

  【中脘、三陰交】灸すること各々二百壮。

〇霍乱して人事を省(かえりみ)ず、厥逆して死せんと欲する者を治する法(同上)

  【神闕、気海、外踝、承筋】神闕に灸すること数十壮。△灸急方に云う、霍乱病勢甚だ劇しく手足厥冷漸く危篤に至れば則ち塩を臍中に填(は)めこれに灸すること一二十壮。また臍下の気海穴これに灸す。若し転筋甚だ屈伸しがたき者は外踝の上に灸すること七壮。千金に云う、霍乱して已に死すも暖気ある者は承筋に灸すること七壮、能く死人を活(いか)す。

〇霍乱し転筋する者を治する法(救急易方)

  【外踝、内踝】足外踝骨尖、これに灸すること七壮。若し、内筋転ずれば則ち内踝骨尖に灸するなり。

〇霍乱して諸方験あらざる者を治する法(同上)

  【大椎】に灸して即効あり。


救急

〇卒死して口張り反折する者を救う法(救急方)

  【両手足の大指爪甲の後ろ】に灸すること各々十四壮。

〇卒死して四肢収まらず失便する者を救う法(同上)

  【乳根?、建里、中極】心下一寸、臍上三寸、臍下四寸に灸すること各々一百壮。

〇魘寝卒死を救う法(同上)

  【人中、大敦?】急ぎ人中穴、両脚大拇指爪甲を厺(さ)ること韮葉ばかりに各々灸すること三五壮。




――瘡瘍(そうよう、皮膚病のことか)病――

〇瘡瘍八處灸法(医綱本紀、五蘊抄)

  【?★】凡そ瘡瘍、瘡癤、無名の悪瘡、各處に寸法を定めこれに灸すれば効あらざるなし。神応経に云う、成化九年癸巳の孟冬、日本国の鼻山殿の使副する所の官人、信州の隠士良心言く、我が国二百年前に両名医あり、一を和介氏となし一を丹波氏となす。この二医専ら癰疽・疔癤・瘰癧を治するに八處灸法を定め、甚だ神効あり。凡そこの八處灸法は痛めば則ち灸して痛まざるに至り、痛まざれば則ち灸して痛むに至るまで、あるいは五百壮あるいは七百壮、大柱多灸し尤も妙なり。癰疽初めて発するに灸すれば則ち潰さずして自ら癒ゆ。已に潰るに灸すれば則ち肌を生じて痛み止み、また再発することなし。瘡瘍頭面に生ずる者は、稗を以て耳尖上周廻してこれを遶り以て寸法を定む。同じく肩より手指頭に至るに生ずる者は、稗を以て肩髃より中指頭爪甲端に至る寸法を定む。同じく中身に発する者は、両乳に随い周廻し以て寸法を定む。同じく陰股より足指頭に至る者は、両足を合わせて左拇指より右拇指端に至る周廻の寸法を定む。右の左右八處の灸法は各處の寸法を以て患人手を掬い一握を断捨し還って中折し喉結に直て背に垂下し縄末を合わせて尽きる處に仮点す。脊椎を挟み各々開くこと半寸の二点なり。これに灸すること五十壮より百壮に至り験あり。三たびして報ず。右の各處二穴、四部合わせて八穴なり。△蓋し和丹両家伝える處は簡易にして備わる。病を治するに適し、その理は撓むべからず。往々にしてかくのごとき類甚だ多し。能くその要を得る者を謂うなり。而してこの法諸家載する所少しく異同あると雖も余この法に随って試効頗る多し。

〇毎歳無名の瘡瘍を発する者を治する灸法(試効)

  【膀胱兪】常々断せずこれに灸す。

〇雁頼瘡(湿疹性皮膚病)を治する灸法(五蘊抄)

  【地機?】足内踝より曲泉に至る寸を定め中折して曲泉より垂下する處の一点骨際、これに灸すること七壮にして妙効あり。

雁頼瘡連年発して瘥えざる者を治するに甚だ妙ある法(信州異人伝)

  【陽陵泉、陰陵泉】予め解毒薬剤を服し、陽陵泉・陰陵泉の二穴に灸して妙々。△余嘗てこの患ありて異人に逢い、この法を受け、乃ちこれに灸して全く癒え、また後患なし。

〇疥瘡(はたけ)を治する妙灸法(試効)

  【老宮?】凡そ疥瘡久しく癒えざる者、これに灸して痒み止まり、瘡痂自ら落ち、奇効を奏す。先ず縄子を以て口横寸を取り、腕後横紋に直て掌中に至り尽きる處、これに灸するに左右各七壮、日にこれを灸す。

〇一切の癰疔を治する法(古伝)

  【陽池?】手を大指岐間で叉(まじ)えて中指頭の中(あた)る處、これに灸す。△この法また唇燥裂、口吻瘡および一切の頭面瘡を治するに奇験あり。

〇九曜灸 諸瘡の頭面手臂にある者を治する法(古伝)

  【?★】先ず縄子を以て患人の眉毛に直て頭の周囲を量り、その縄を以て男は左、女は右の掌の中央横径に直てこれを切り去る。また手中指爪甲横寸に直てこれを切り去り、以てその余りの寸を以てこれを中折し、患人の結喉に直て脊椎骨に垂下し、これに点ず。また別に縄子を以て環口赤白肉際に貼りて寸を取る。これを三折して一分を切り去り、また二分を中折し背中の点に直て、またその両端に点してその上下、左右、四隅斜めにこれを点ず。合わせて九曜となし、各々灸すること七壮。若し瘡、腹背脇にある者は、縄子を以て量りて乳頭に直て身体周囲、前法のごとく掌中および爪甲横寸を去り余寸を取りて結喉に直て背中に垂下し、また環口寸を取り前のごとく九穴、これに点ず。若し瘡、足脛にある者は、患人をして正立せしめ、左右の足を斉え、両足輪の周囲を取り、また前法のごとく手掌および爪甲寸を除去し余寸を取りてこれに点ずる九穴。△この法は前の瘡瘍八處の法と点ずる法頗る相似し、孔穴稍々多く、効験頗る髣髴たり。これを要するに、その源は和丹両家に出る一家の秘術に存するのみ。

〇骨槽風を治する法(試効)

  【女室】足の後踝赤白肉際に灸すること左右各五十壮、一月にして験あり。△嘗て頷鰓に孔を穿ち膿血の淋漓(りんり)する者を救うに験あり。


雑症

〇白痜を治する妙灸(試効)

  【養老】手の太陽養老穴に灸すること三壮。一たび灸して則ち十日ばかり経て即ち癒ゆ。外菌蔯黒霜麻油に和し、これに塗る。

〇鵞掌風癬を治する法(五蘊抄)

  【間使】に灸すること七壮にして妙々。




――婦人――

崩漏帯下

〇婦人赤白帯下、虚咳、労痩、下焦虚冷し久しく孕(はらむこと)を受けざるを治する法(試効)

  【中注?】患人の口の横寸を取り、これを三折りし、これを三隅とし、その一隅を臍に直て臍下左右の両隅垂下する處、これに点ず。各々灸すること五十壮にして屢(しばしば)報ず。

〇婦人瘀血、血塊、赤白帯下して、腰脚冷痺し逆気する者を治する法(試効)

  【命門の際?】婦人帯を着する處の下、椎骨二節の際に少し間ある者を見、これに点ず。灸すること二十一壮。蓋し、その間骨人々同じからず、上者あり、下者ありて、当にこれを按じて灸せんとすなり。

〇帯下崩漏、経水調わず、腰中冷えて妊(はらむこと)なき者を治する法(筑州太医伝)

【左右の次髎と左の次髎骨際?】先ず縄子を用いて左右十指爪甲の寸を取り、その寸を伸ばしてこれを三折りしその一分を断去しその二分寸を用い、患人をして席上に踞坐(あぐら)せしめ、その二分寸を以て長強より上に背骨に直て仮点す。またその二分寸を折り、その折る處、仮点に直て左右に開き尽きる處の二穴。また前の仮点の左の骨際に一穴、合わせて三穴、各々二十一壮。△按ずるに世上に多く男左女右の法あり。この法は婦人左を用いること妙術、口伝に存すなり。

〇婦人の崩漏帯下、腰脚の疼痛、攣急、男子の疝積、腹皮攣急するを治する法(五蘊抄)

  【次髎?】四指一扶の寸を取り、これを長強に直て背骨に上らせ尽きる處に仮点す。また中指同身寸一寸を用い、仮点に直て男左女右に一寸開き一穴。これに灸すること日に二三十壮。

〇赤白帯下を治する妙灸(五蘊抄)

  【次髎、上髎およびそれらの督脈上?】先ず患人をして竹馬に騎せしめ、長強より上ること三寸の背骨一点、左右各々一寸五分開き、二穴。また一寸下げ同じく三点す。都て六穴。

〇帯下、腰痛および脱肛を治する奇兪(試効)

  【次髎、上髎およびそれらの督脈上?】稗を以て右中指頭より掌後横紋に至る寸を取る。これを亀尾に直て背骨を上らせ尽きる處、これに点ず。またその点より同身寸一寸を以て上る處、これに点ず。合わせて二穴。而して二穴の左右各々開くこと一寸、合わせて六穴。灸すること各々七壮。

〇婦人の帯下、腰痛甚だしく小便渋滞するを治する法(試効)

  【胞肓】背十九椎開くこと三寸。灸すること五十壮。


産科

〇分娩に横生し手出るを治する法(医綱本紀)

  【至陰】左足小指の尖に灸すること三壮、立ちに産ず。柱小麦大のごとし。得効方に云う、横生、逆産に諸々の薬効かざるに、急に産母の右脚小指尖頭上において灸すること三壮、即ち産ず。至陰穴と名づく。

〇産後に陰(子宮)下脱するを治する法(試効)

  【臍下横紋】に灸すること二七壮。△或いはこの灸法を以て婦人淋瀝疼痛甚だしき者を救う。三壮して験あり。妙にして言うべからず。


求嗣

〇婦人、子なく、或いは産後久しく再孕せざるを治する法(医鑑)

  【帰来?】先ず稗心一条長、同身寸四寸を取り、婦人をして仰臥せしめ、手足を舒(のば)し、量る所の稗心を以て臍心に直て垂下し尽きる頭處、墨を以て点記す。後、この稗心を以て平摺横に前点の處に安じ、両頭尽きる處これ穴なり。これを按ずるに自ずから動脈手に応ずるあり。各々灸すること三七壮、神験あり。

〇婦人の求嗣法(医学綱目)

  【子宮】子宮(中極の左右三寸)に灸すること三七壮。

〇婦人妊子ならず、数々堕胎する者を治する法(得効方)

  【胞門・子戸】胞門(関元の左二寸)、子戸(関元の右二寸)に灸すること各々五十壮、屢(しばしば)これを報ず。





――小児――

〇五疳を治する法(試効)

  【命門の骨際?】大椎より十五椎に至る、男は左、女は右骨際、これに灸すること三五十壮、逐日にこれを灸す。△疳によりて失眼する者、或いは驚風および諸虫の将に虚労ならんとする者、これに灸して尤も妙なり。

〇疳眼にて目盲するを治する法(試効)

  【?★】大椎より直ちに髪を分け鳩尾に至る寸を取り、口の横寸許を断捨し、還りて結喉に直て背骨を垂下し仮点す。両傍相い去ること一寸半の二穴。これに灸すること三十壮にして三たび報ず。

〇急慢驚風の危極にして救うべからざるを灸する法(試効)

  【乳中?】先ず両乳頭黒肉の上に直て、男は左、女は右に灸すること三壮。

〇癖を灸する法(回春)

  【?】小児背骨中、尾骶骨より手を将(ひき)い揣摩し、背骨の両傍血筋の発動する處、両穴あり。一穴毎に銅銭三文を用い、穴上を圧上し艾柱を以て孔中を安じ、各々灸すること七壮。これ癖の根にして血を貫くの所なり。




――雑症――

〇失音暴瘂を治する法(救急易方)

  【中極?、手足の中指頭】臍下四寸陰毛の際、横骨陥中に灸すること一七壮、幷びに男は左、女は右の手足中指頭の尽きる處、各々三壮を灸して最も験あり。

〇狐魅を灸する法(試効)

  【脾兪?】十一椎両傍相い去ること各々一寸、二穴。これに灸すること十五壮。伝に云う、この處強くこれを推せば則ち当に聚気あらんとす。これ徴なり。

〇また法(得効方)

  【少商?】両手の大指を合わせて縛り、合間に灸すること三七壮、当に狐鳴いて即瘥えんとす。△神応経、類経、図翼も鬼哭の穴、一切の邪宗を治すること妙々、この法に同じ。

〇狂犬毒を治する法(試効)

  【傷口】凡そ狂犬人を咬まば当に先ず鈹鍼にて悪血を去り、仍(しかし)て瘡中に灸すること十壮、逐日これに灸して百日に至れば乃ち止む。△按ずるに、資生、千金、銅人みな咬牙跡上においてこれを灸する。その他、蛇蝎(まむし)、蜈蚣(むかで)、蜂蠆(はち)に螫(さ)さるれば即ち傷處においてこれを灸し、毒気を引き出して尤も妙。

〇腋下の狐臭を治する法(試効)

  先ず刺刀を以て腋下の毛を除去し、患人をして手を挙げさせ、粉錫を擦(す)り、しばらくして一竅ありて汁気出る處あり。これ臭気の叢れる所なり。その竅においてこれを灸すること左右各々十五壮。重くとも三たび報ずれば則ち癒ゆ。



――付録敷灸――

(省略)



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