墨西奇譚17
先日(10月7日)、二人の女性から話しかけられた。
二人とも50歳くらいのおばさん。一人は駐車場で話しかけられた。この寺を訪れるのは初めてで、お下がり大根をいただきたかったけど、すでに配布終了だったので残念、次はいつ配布されますか、と訊かれた。私がお昼前後になるのじゃないかな、と答えると、そんなに待てない、残念だわ、とおっしゃった。私は、その場を離れて持ち場へ帰った。
すこし思案して、本殿に上がり、職権で奉納された大根を1本取り、それをレジ袋に包んで、駐車場へ向かった。すると、件のおばさんがこちらに向かってこられていたので、「初めてで手ぶらで帰られるのは忍びないので、本殿から取ってきました。お下がり大根です。ご利益ありますよ」と言って、大根を渡した。おばさん、満面の笑みで「大変うれしいです」とおっしゃり、非常に感激されていた。
もう一人は水商売をやっておられるおばさんで、この寺には何回か来たことがあるが、ここの空気は違いますね。何か、こう、云々、とおっしゃるので、私は、そうなんですよ、私も初めてここに来た時それを感じました、と答えた。それから、いろいろ話した後、もう1回、境内を回ってお参りして来ます、こちらから行けばいいのですよね、とおっしゃるので、私が「いいえ、そちらでなく、こちらかから行ってください。時計回りが正しい回り方です。それから、お参りする場所は3か所ありますが、ご存じですか」と訊くと、知らない、とおっしゃる。
そこで、私が、「ここに石畳がありますよね、この石畳が本堂に向かって伸びているところが西側と裏と東側の三か所にあります、そこで、聖天様お願いします、と三度唱えてください。それだけでいいです」と答えたところ、「まあ、知らなかったわ。有難うございます。行ってきます」とおっしゃり、喜んでお参りに向かわれた。
そして、きょうもおばさんに声かけられた。40歳前後の方。やはり、お下がり大根のことである。いつ下りますか、と訊かれたので、本殿のテーブルの上のお供え大根が一杯になったら下りてきますが、いつ下りてくるかは分かりません、と答えた。すると、非常に残念な顔をされた。私、気の毒になって、「ちょっと待って」と一声かけて、拝殿に登り、テーブルの大根数本をわしづかみにして戻り、お下がり大根用のテーブルに並べ、「どうぞ」声をかけた。
おばさんは、喜ばれ、何度もお礼を言いながら大根をレジ袋に包んで自分のバッグに入れられた。そして、なんと、手提げ袋を私に差し出された。私が拒否すると、「これは私の気持ちです、ぜひ受け取ってください」とおっしゃる。私、あまり遠慮しない性格なので、ありがたく受け取った。家に帰って手提げ袋の中を覗くと、おいしそうな最中が5個入っていた。

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