増谷文雄
- yokando2
- 2023年9月10日
- 読了時間: 1分

増谷文雄は『現代語訳正法眼蔵』を書き終えた76歳のとき、カナダに住んでいる息子を訪ねる。そして、盛んに「アクメ」という言葉を連発する。アクメとは、人生の最盛期という意味である。「この後、阿含経典の現代語訳をやれば、それで終わりだ」と言ったそうである。
増谷文雄(1902-1987年)は福岡の浄土宗の家に生まれ、宗教学者となり、著述に没頭し、机の前に正座して原稿を書く毎日を送った人である。彼が、アクメを迎えた人生の晩年に手がけたのが、日本人の漢字離れが進み、仏教経典が縁遠くなってきたときに、仏教の教理をその原点に立ち返って知ってもらうこと、すなわち、インド、中国、日本と伝来してきた仏教の代表的な著作「阿含経典」と「正法眼蔵」の現代語訳を世に提供することだったわけだ。お釈迦様の言葉を集めた「阿含経典」を取り上げるのは当然だろうが、浄土宗の増谷が何故に曹洞宗の道元の著作を取り上げたのか、そこには他の宗教にはない仏教の持つ寛容に加え、求道者、道元に対する深い共鳴があったようである。
Kommentarer