佐藤忠良
- yokando2
- 2023年12月9日
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佐藤忠良(1912~2011年)は、98歳で亡くなる2か月前に、娘のオリエが摘んできたサザンカの花を写生しながら、こう言ったそうだ。
「芸術は自然にはかなわないなあ」
彫刻家の佐藤は、自分を職人と呼んでいるが、最後まで、得心のいく作品を彫ることが出来ずに苦悩した。そして、こう述懐している。
「ひとびとをいつくしまないものは芸術ではない。人の顔をつくるときは、その人の怒りや喜びや過ごしてきた時間、過去と現在と未来までも、時間性を粘土の中にぶち込もうとする。それが彫刻家の苦しさだと思う」
ひと昔前、琵琶湖のほとりにある佐川美術館で、佐藤忠良の作品展を見たことがある。そこには、娘の「オリエ」や「王貞治」や「群馬の人」などの彫像があり、実際に手で触って、そして彼らの過去・現在・未来を感じてきた。
佐藤忠良は、本職の彫刻のほかに、「木」や「おおきなかぶ」などの絵本や小説の挿絵などもてがけている。また、いまや伝説となった高校の美術の教科書の編集にもたずさわっていた。その美術の教科書「少年の美術」には、佐藤忠良が「なぜ美術を学ぶのか」と題して一文を寄せているので、紹介する。
「美術を学ぶとき、既成の美術というものがあって、それを覚えたり、詰め込んだりすればよいと考えないことです。自分の感動や感覚が最初です。何かをしたいという意図が先です。それからが技術ですが、技術は人間が長い時間をかけて、自然を手本にして、習得してきたものです。自然の恩恵と人間の努力の影を感じながら身につけましょう。こうして自然から学んだ技術だけが、自分の意図を表現してくれるのです。・・・私は、皆さんの一人一人に、ほんとうの喜びや悲しみ、そして怒りがどんなものかがわかる人になってもらいたいのです。美術を真剣に学んでください。真剣に学べば、美術は必ずこたえてくれます。」
ちなみに、娘のオリエは女優の佐藤オリエのことで、映画「若者たち」で佐藤オリエ役を演じ、寅さんシリーズでもマドンナ役を演じている。私の大好きな女優の一人である。
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