長野潔
- yokando2
- 2023年10月31日
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ボストンを拠点に世界で活躍されていた鍼灸師の松本岐子は、鍼灸師になりたての頃、自分の師匠を捜すのに、5つの基準を設けたそうだ。
1)古典を学んだ人
2)西洋医学の知識があり、東西医学の両サイドより患者を診断できる人
3)臨床経験が豊富で、その結果が優れていること
4)カリスマではなく、学べば同様の結果がでること
5)尊敬できる人
この5つの基準を満たした人が、長野潔先生(1925年~2001年)だった。先生は、大分市で鍼灸院を開院し、松本岐子が弟子入りした頃には、東西医学の融合による30年以上の臨床経験があった。その治療法は「長野式」とよばれ、弟子や子息に受け継がれ、研究会や雑誌への投稿などを通じて広められている。
長野潔は、最初は理学療法士としてスタートしたが、外科医療の驚異的な成果に圧倒されつつも、慢性疾患や腰痛、膝関節症などの日常的な疾患に全くの無力である西洋医学に失望し、東洋医学の道に進むことになった。そして、大分に鍼灸院を開設し、しばらくしたころ、家の墓地の石質の子安観音像が、家族が無事息災のときは温和和気溢れる表情になり、逆に哀愁憂苦のときは悲傷慨嘆の表情に変化するのに気づいたそうだ(第三者確認)。この厳粛な事実に直面したとき、血の逆流するような驚愕を覚え、「気」の力を確信し、それ以来、鍼灸の臨床で、この常識を超えた「気」を中心とした視点で診察し、西洋医学と東洋医学の統合を推し進めていったという。
その後、気流促進処置法、水分代謝促進法、血流促進処置法、粘膜炎症処置法、自律神経系・内分泌系調整処置法、免疫機能強化処置法など、いわゆる「長野式」と呼ばれる画期的な、東西両医学融合の一連の治療法を開発された。
これらの治療法の中で、最も基本となる治療法が、免疫機能強化処置法のひとつである「扁桃処置」と呼ばれるものである。「風は万病のもと」といわれるように、「扁桃は全ての疾患のもと」と考えた長野先生は、この扁桃処置によって免疫機能を強化し、あらゆる疾患に立ち向かえる体質に患者を改善せしめ、そしてさまざまな症状を改善されたのである。「扁桃処置」で使われるツボは、大椎、天牖、手三里、照海の扁桃七点である。この七点に毎日お灸をすえると、めまい、食欲不振、嘔気、頭痛、頸・肩のこり、耳鳴り、不眠、易疲労、全身倦怠、ふらつきなどの症状が、多くの場合、4か月程度で消失してしまうのである。
長野式鍼灸処置法の実際は以下の通り。以下の中の「扁桃処置」は、上に述べた方法と少し異なるが、これこそが、日々進化した長野式の長野式たるゆえんである。
【胃経三点処置】
胃の気の流れを起こす、下向き30度で1cm刺入、軽雀啄後吸気右回し抜鍼し後を閉じる
・足三里、豊隆、蠡溝の高さで脛骨骨際
【扁桃処置】
慢性疾患の原病巣である扁桃を治し免疫力をつける、天牖に圧痛あれば魚際にも圧痛
・照海、天牖に1cm刺入後留置、手三里に直刺で軽雀啄
・魚際に圧痛残る場合は、尺澤に2cm直刺後雀啄2~3呼吸でとれる
【帯脈処置】
体のねじれを解消し帯脈のコリや右肩痛をとる、側臥位で吸気右回し抜鍼し後を閉じる
・肝経の火穴(中封)1cm直刺、水穴(曲泉)深く直刺後留置
・帯脈にコリにあたるまで直刺後軽雀啄30秒~5分(右肩痛とれるまで)
もっと効かすには座位で正中帯脈、後帯脈(1cm背側)、前帯脈(1cm腹側)の順で直刺
【下垂処置】
内臓下垂による腰背部痛をとる、側臥位で鼠径部の圧痛消失するまで
・京門に直刺、浅層、中層、深層(2cm)の順に雀啄
・生辺(肩甲骨内縁の線が腸骨稜と交わるところ)または大腸兪から
・關門に向けて直刺3cm、雀啄後吸気右回し抜鍼
仰臥位、腹筋が弱い内臓下垂の場合で氣戸の圧痛がとれるまで:
・内陰(陰谷の上4寸)直刺2cm、伏兎・風市・郄門に流注に沿い1cm
・氣戸(ふくらんでいるところ)に内から外へ水平刺1cm、以上留置15分~20分
【側弯処置】
以下の3条件の場合、側湾のゆがみを取り除く
①脈数、②陽輔に圧痛、③脊柱を両指でさすり右か左へゆがみ
・側湾と同側の陽輔付近の圧痛点に流注に逆らい1cm刺入後留置
・外關に直刺後軽雀啄、肩・腰背部の痛みがとれるまで
【筋緊張緩和処置】
頚部の緊張、肩背部の圧痛をとる、頚部の硬さがとれるまで、吸気右回し抜鍼後閉じる
・仰臥位で健側の丘墟に直刺1cm後留置
・患側の上四涜(前腕部の上から1/3)に直刺2cm後雀啄
【脊柱起立筋緊張緩和処置】
脊中起立筋の緊張を柔らかくする
伏臥位で屈伸(腰腸肋筋、仙腸関節の外側1~2cmの硬い部分)に3回刺入
1)内から外へ向けて浅く(20~30度1~2cm)刺入後すぐに抜鍼
2)鍼をやや急にして中層に刺入後軽雀啄して緻密組織を柔らかくする
3)鍼をさらに急にして深層に刺入(80度で4cm)後軽雀啄、吸気抜鍼
【横V字型椎間刺鍼処置】
後根性、交感性、副交感性の3神経の刺激で血管を拡張させる、頭痛もとれる、伏臥位で
・圧痛のある横突起付け根(外側5分)に内上方45度で1cm刺入、反対側にも同様
・なみだ目・かすみ目・乱視にはC4/5椎間が効く
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