沢田健
- yokando2
- 2023年10月10日
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中医学では、陰陽のバランスを調整して病を治していく。この陰陽は、易の思想によると、太極から生まれ出るもので、3つ組み合わさって乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤の八卦が出来上がる。陰はマイナスで陽はプラスであるから、合わせるとゼロで、太極は結局「無」ということになる。
ミクロの世界では、物質と反物質が衝突すると、2つの物質はともに消滅してしまうが、消滅したそれらの質量に相当するエネルギーが発生する。だから、太極は無であると同時にエネルギーと見なせるのではなかろうか。
この太極のエネルギーをお灸によって生み出し、患者の治療に用いたのが沢田健である。彼の治療法は「太極療法」と呼ばれ、左陽池、曲池、中脘、氣海、足三里、照海、身柱、脾兪、腎兪、次髎などの基本穴にお灸をし、これによって全身の調整を行い、あらゆる疾患を治癒せしめたのである。
沢田健(1877-1938年)は1877年河内の伯田に生まれ、柔術を修行し、朝鮮各地を遍歴した後、東京に治療所を開き、鍼灸古道の達人として天下に知れわたり、1938年、62歳で亡くなった。
昭和11年8月6日に京都祇園中村楼で行われた澤田健先生の講演から:
「どうも私はしゃべることは極く下手な人間ですが、鍼灸道の紀元ということについて一ぺん皆さんに聞いていただきたい。
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これから従来にない臍を中心としての診断法を申し上げます。先ず司天在泉について申しますと、骨肉門と水分の三穴が司天で、臍から上を司る。それから大巨と気海の三穴が在泉で、臍から下を司る。天枢は司天在泉両気の合するところで、ここで天の寒気と地の寒気とが合するのです。天枢から寒気が大腸に入るときは、大腸のうちに小瘡を生ずるので、これを腸チブスといい、昔は傷寒といいました。これを治するには、臍の周囲の八穴(司天三穴、在泉三穴、天枢二穴)と手足の三里に灸をすえるので、壮数は五十壮または百壮乃至は二百壮すえるのであります。次に大巨より地の気が斜線に添って反対側の期門を突く場合は、肝臓に入り胸中に入り、肋膜炎・肺炎を起こします。それから膏肓に入り、裏期門に出ます。このときが絶体絶命のときですが、これを治するには裏期門へ灸するか鍼するとよい。これこそ起死回生の法であります。この裏期門を抜く法が澤田流の極意です。
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腎臓を先天の原気、脾臓を後天の原気、三焦を原気の別使といって、この三原気が集まって人間の一元気となるのです。また五臓六腑の病気は悉く皆膀胱経の兪穴にあらわれ、これを治すもまたその兪穴によるのであって、総ての病気は膀胱に関係をもっている。その膀胱は腎の所属であって、膀胱経は腎経の表であります。だから総ての病気は腎を根本として見てゆかなければ、診断も治療も成り立たないのです。澤田流で腎臓に重きをおく理由が、これでおわかりになったと思います。
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私は長年の間研究しておりますが、総ての病気は肝臓がはじまりになります。病は膈兪から入って期門に出て、期門から肝臓に入るので、門というところは非常に大切なところです。それから肝臓に病が入ると肝兪へ出る。肝兪から章門に出て、章門から脾臓に入る。脾臓から脾兪に出て、脾兪から京門に出る。ここがひどく響くところです。京門へ出ると腎臓が弱くなります。この腎臓から逆に上に行く。心臓にゆき心兪にあらわれ、しまいには肺に入る。肺は終点です。
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心臓病のときに、それを治そうとすれば三焦をおさめなければどうしてもだめだ。陽池と中脘をすえて三焦の調節をとる。そうすると丹田に力が出来る。丹田は関元(=気海)のことです。気海は腎の所属で、腎間の動の発する所であり、つまり天の気を三焦のうちの中脘に受け、それが気海に入って動くのであります。それから気海より脳にのぼる。脳は上丹田であります。精神は脳にあるというけれども、精神をおさめるのは気海丹田であります。
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また三焦について概略を申し上げると、上焦の熱を心が主どり、下焦の熱を腎が主どり、中焦によりて上下の熱を連絡せしめるのであります。それで心が陽火、腎が陰火、三焦が相火といって陽火と陰火を連絡せしめるもので、中脘がこれを主どるのであります。それから上中下の三脘は三焦にひびくので、上焦は膻中、中焦は中脘、下焦は関元であります。
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それから熱府と寒府について一言申しますと、熱府は風門で、寒府は膝の外の陽関です。この熱府と寒府とで外より侵入し来った寒気を去ることが出来るのですが、内臓の熱は、脊の五臓の兪穴の第一行によって去ることが出来るのであります。」
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