top of page
  • yokando2

森敦


森敦(1912-1989年)は熊本県天草で旨い魚を食べて育ち、熊野川の源流にダムを建設する仕事に従事し、湯殿山の麓の注連寺にこもり、62歳のとき『月山』で芥川賞を受賞し、晩年、NHKの企画「マンダラ紀行」で真言密教の聖地を車椅子で訪ねている。森敦の母は讃岐の出で旧姓佐伯ということだから、空海にかなり縁があるのである。


①出羽三山(羽黒山~湯殿山~月山)

②神護寺(柳原秀子の両部マンダラ)

③東寺(宗覚の両部マンダラ)

④東大寺(ビルシャナ仏)

⑤百八十町石(慈尊院~高野山)

⑥四国八十八ケ所


このマンダラ紀行によって森敦の思考は結論した。両部マンダラの胎蔵界と金剛界は陰と陽、内部と外部であり、メービウスの帯のようにつながり、一切でありしかも一である。外部は私であり、内部は宇宙である。一として中心をなす私が一即一切の一であるとき私は宇宙に信号する。一として中心あらしめられた宇宙が一切即一の一であるとき宇宙は私に信号する。かくて、私は宇宙と、宇宙は私と交感する、と。これはもう、西田幾多郎の「絶対矛盾的自己同一」の世界である。


集英社刊『森敦との対話』(2004年)には、芥川賞作家森敦の弟子で後に養女となった森富子が、埋もれていた天才文士森敦を叱咤激励して『月山』などの名作を書かしめていった経緯が綴られている。


旧制一高を中退した森敦は芥川賞を62歳でとるまでは、生涯、一所不在で、光学会社、電発、近代印刷で3回働いただけで、あとは放浪していた。その森敦が富子にぜひ読むように勧めた本がある。以下の書物だ。若いころ、改造社「現代日本文学全集」、春陽堂「明治大正文学全集」、春秋社「世界大思想全集」、新潮社「世界文学全集」などを読み漁っていた森敦ならではの選択である。


・ヘミングウェイ「殺人者」

・ジョイス「ダブリナーズ」「ユリシーズ」

・カフカ「死刑宣告」「兄弟殺し」「判決」「万里の長城」

・リルケ「神様の話」「墓堀り男と少女」「最後の人々」「体験」

・フローベル「ボヴァリー夫人」

・イプセン「ロスメルスホルム」

・ハウプトマン「寂しき人々」

・セルバンテス「ドン・キホーテ」

・ゲーテ「親和力」「ファウスト」

・ダンテ「神曲」

・ラッセルとホワイトヘッド「プリンピキア・マテマティカ」

・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」「悪霊」

・ゴーリキー「どん底」

・ゴーゴリ「外套」

・シェークスピア「ハムレット」

・ボーマルシェ「セビリアの理髪師」「フィガロの結婚」

・アラルコン「三角帽子」

・ジッド「パリュード」、「贋金つくり」

・ボードレール「悪の華」

・バルザック「従妹ベット」

・蒲松齢「聊斎志異」

・鴨長明「方丈記」

・与謝野晶子訳「源氏物語」

・近松門左衛門「心中天網島」

・尾崎紅葉「多情多恨」

・泉鏡花「夜叉ヶ池」

・樋口一葉「にごりえ」

・夏目漱石「明暗」「こころ」

・志賀直哉「暗夜行路」「矢島柳堂」

・谷崎純一郎「麒麟」

・永井荷風「墨東奇譚」

閲覧数:1回0件のコメント

最新記事

すべて表示

小堀遠州

bottom of page